タイ鉄道 夜行列車の種類と車両
2020年1月現在、タイには高速鉄道が無いことから、タイ全土で在来線の夜行列車が大活躍しています。在来線の夜行列車好きには嬉しいです。
夜行列車の種類(種別)と運用車両をまとめてみました。
夜行特急
中国製の新型車が運用される夜行特急。
南本線の特急37レ スンガイコーロック行など一部の在来車両の特急も残っています。
新型車は、非常に快適です。また運行上も特急が優先され、他の列車を退避させるようで、遅延の発生が少ないです。(※それでも30分程度はたまに遅延していますが、タイの鉄道旅行に慣れている諸先輩のご意見では、「タイ鉄道において30分の遅延はむしろ早着のように感じる」とのことで、郷に入りては郷に従うしかないようです。)
特急1等個室車
特急には1等個室寝台車が連結されています。タイ国鉄の最高級車です。
新型の1等個室寝台車 定員2名 2段式 車端部に1等客専用の共同シャワー室があります。
1名利用の場合は、他の同姓の方2名で利用となります。
(私は1名利用なら開放2等寝台の方が気楽で好きです)
個室内には小さな洗面台と小物棚があり、棚の中にサービスの水ペットボトルがある。
(はず…私が初めて乗った2019年12月26日は、ペットボトルが入れ忘れられていた…悲)
(ヨーロッパだとここに赤ワインの小瓶がサービスされたりする…)
これがサービスされるタイ国鉄オリジナルデザイン(ファラポーン駅舎)の水。
タイの寝台車は全て運行開始後に客室係の車掌が寝台ベットを作ってくれます。
シーツはキレイ!
1等の各寝台には液晶画面が設置され、ビデオ放映のみならず、現在位置表示やお手洗い設備の使用状況まで分かります。素晴らしい!設備ですね。
↓個室の上段客用のモニター
↓2019年10月31日に初めて個室寝台に試乗した際の動画です。シャワーの使い方の解説もあります。(疑似車内放送もありますが、御耳触りの方はカットされて下さい。)
新型だけでなく、在来車両の寝台特急も残っています。
韓国や日本で製造されたステンレス車体の車両が運用されています。新型と同じく1等は2名個室です。
新型車には2等も含めて、個別にコンセントが設置され、夜間に充電ができますが、
従来車は1等でもコンセントは車内共用しかありません。(本来は掃除機など業務用のコンセントしかない)ここは利用客にとっては重要な情報かと思います。そのため私は新型か旧型の非冷房2等の両極端の車両しか利用していません。
特急2等(開放)寝台
タイ国鉄は伝統的に2等寝台はプルマン式を採用しています。
新型特急の場合は、2等でも個別にコンセントが準備されているので、充電が出来ます。
新型はトイレも真空式でキレイ。とても快適です。私はタイ旅行の際、少し遠回りして、
ホテルではなく、この新型寝台特急を選択することもあります。ただし2等にはシャワー設備がないのが欠点です。
↓出発時点では下段は座席、上段は寝台が下りてきてセットしてある状態
↓寝具がセットされた状態
↓朝になると寝具が片付けられ、上段ベットは折り畳む。
上段への台は折り畳み式
新型は2等にも共用の液晶モニターがあり、遅延状況が深夜でも分かる!
各寝台の枕元の電灯とコンセント。このコンセントがありがたい!
↓客室係の車掌さんの部屋、とても狭い・・・。実際には空いている寝台を臨機応変に使われていました。しかし満員の際は、ここで仮眠を取られるそうで、ここの通路に寝ておられ、ビックリしたとの旅行ブログも見ました。乗務員の皆さん、長時間乗務、お疲れ様です!
食堂車
寝台特急には食堂車が連結されています。
しかしタイでは列車内での飲酒が禁止されたことから食堂でもアルコールの販売はなく、
また新型寝台車の食堂は、電気レンジのみの対応のため、コンビニ弁当程度しか準備がないとのことで、私が利用した際はデザートにヤシの実ジュースを頂きました。
↓食堂車の様子とメニューを撮影しています。
旧型車で組成される夜行特急(一部の急行にも)には、旧型の非冷房の食堂車が連結されているようです。
しかし、ネットニュースでは、在来の食堂車は営業を中止するとのアナウンスもあったため、車内販売基地として使用されているようで、食堂部分で車内販売の弁当を食することができたり、一部は調理室で車販用に温かい出来立て弁当を調理しているようです。
(私は前述したようにコンセントが無いので、これらの従来車の寝台特急は利用していません。情報不足でごめんなさい。)
↓旧型の食堂車は、黄色の「レストラン」表示が目印です。
新型寝台特急では車内放送のある場合があります (?)
※車内放送が無い場合や、次駅案内の一言だけの放送の場合もあり、車掌さんの自由なのかな・・・?車内放送がない場合でも、客室車掌氏が、車内を地声で案内して回ったりされる場合もありました。いずれにせよ、寝過ごしには十分、注意が必要です!
従来車両による寝台特急の2等解放寝台には、韓国製・日本製の冷房付きステンレス寝台車が連結されています。車内はプルマン式で新型車と構造は似ています。
座席特急 そのまま夜行運用
昼行特急用の気動車が、そのまま夜行に入るダイヤがあります。寝台車の連結はありません。
例)南本線
●バンコク2250発 特急39(D) スラタニ―行(翌805着)651㎞運行
●バンコク2250発 特急41(D) ヤラ―行 (翌1430着)1055㎞運行
※39D+41Dはスラタニ―まで併結運転
例)北本線
●シアラー1950発 特急4(D) バンコク行 (翌400着)488㎞運行
イギリス製ASR型や韓国製APD型の特急気動車で運用。
イギリス製のASR型は日本車両とは異なるスタイル、車体の裾を絞り腰高の独特のデザイン。私は以前、イギリス北部のローカル鉄道線を旅行したことがあり、懐かしい…しかし老朽化で故障が多く、実際にはほとんど運用されず、ほとんどの特急はAPD型で運行しているようです。
↓この写真は、韓国製APD型
座席特急には客室乗務員が乗務し、軽食や食事(コンビニ弁当程度)のサービス付き。冷房付きで窓が開かないことから、窓を開けて車窓を楽しみたい私は敬遠しました。夜行便は、特急のダイヤで、予約システム上、寝台車の連結がないので、分かります。運賃・料金が高価であることから、利用客が少ないのか、3両編成程度の連結しかないようです。3両で非電化区間の昼行気動車と言えば…、1990年代の日本の山陰本線に例えると、この昼行特急気動車がキハ181系のようだと書かれた鉄ファンさんの記事がありましたが、なるほどね~と思いました。
夜行急行
前述の新型寝台特急の運用開始により、以前、特急用だった韓国製・日本製の冷房付きステンレス寝台車が連結されています。
2等座席客車(冷房無し)
日本で言うと、グリーン指定席に当たる車両です。車体の窓の横幅が少し小さめの車両で、3等車とは雰囲気が異なります。
タイ国鉄でも前向きのリクライニングシートの車両が運用されています。
冷房付きと冷房無しタイプがあり、冷房無しタイプは、車内が木製の非常に古い車両がほとんどです。
私は古い車両が好きですが、さすがに夜間運行の便に乗るなら、寝台が良いので、
試乗したことはありません。
イカロス出版さんの「タイ鉄道散歩」というムック誌には、この古い2等客車のシートを日本の新幹線のお古の回転リクライニングシートに取り替えた車両の写真がありますが、私はまだその新幹線のシートを付けたタイ国鉄の車両を見たことはありません。
2等座席車(冷房付き)
A.S.C.201型。日本(国鉄~JR)から移籍導入された車両の中で、2020年1月現在、唯一通常の定期運用を持つのが12系客車を(魔)改造した車両です。
車体に新規に大きな両開き扉を設置。この部分に車イス用リフトも設置。車内は3列大型リクライングシート化。座り心地良さそうな椅子ですね。
タイでも日本と同じく、長距離の高速バスのレベルが上がってきており、これらに対抗するために、タイ国鉄さん頑張ってデラックス化したのでしょうか。
2020年1月現在、南本線の急行夜行列車(83レ-84レ バンコク⇔トラン / 85レ-86レ バンコク⇔ナコンシータマラート)に連結。予約システム上は、エアコン付き2等座席指定車として販売。
(いつ運用離脱するか?分からないので最新情報はタイ国鉄英語版HPでご確認を…)
座席急行 そのまま夜行運用
タイ国鉄 東北線や北本線では、昼行の座席夜行がそのまま夜行運用に入るダイヤがいくつかあります。
この急行に運用されているのが、日本製の近郊型気動車。車内外はキハ47やキハ45に似ています。(↓私の別ブログの記事から)
なぜ近郊用の気動車を片道500km以上も運行する長距離の急行ダイヤに運用するのでしょう?車両不足も要因ですが、もう一つはこの日本製のTHN型が、性能がよく、ステンレス車体で軽く、燃費が良い、線路に与える負担も少ない・・・ということなのではないでしょうか?(私の勝手な推測・・・)一部の車両はこの長距離の急行運用のために4-5両固定編成化改造し、中間に入る車の運転台機器を撤去されたそう。
↓この動画は深夜の東北線 ナコンラチャシーマ―駅の様子で、各種の夜行列車が出てきますが、途中、この近郊型気動車の夜行急行も出てきます。
しかしこの近郊用気動車では燃料タンクが小さく、長距離を走破できないので、運行途中の駅で、乗客を乗せたまま、長時間(10-15分間)停車して、燃料補給を行います。そのため、↓下の動画では、一度ナコンラチャシーマ―駅に停車した後、ホームから後退して給油整備のある部分まで向かう姿を記録しています。つまり、この日本製の近郊車両の急行、昼行だけなく夜行(座席車のみの編成)にもそのまま運用され、昼も夜も大活躍。日本の583系電車のような…。(24時間働けますか~♪)
この近郊型気動車の長距離急行、さすがに3等車レベルの非冷房・固定クロスシートだけでは…ということで、中間に2等の冷房付き車両を連結しています。この車だけが運転台の無い中間車で扉も両開きではなく片開き式。日本で言えばキロ28なのですが、このタイ鉄のキロ28は、車窓を楽しむには、なかなか残念な設計になっており、車内を二分したうえで、ドアを中心にそれぞれ集団見合い型とする独特なシート配置、開かない窓。
窓とシートの合わないピッチ…。私は試乗したことはありません。
【妄想】もし、タイ国鉄が1970年代に日本に急行用気動車の発注を頂いていれば、
(私の好きな)台湾鉄路局のDR2700型のような車両がタイでも活躍していたのかもしれません。
3等座席車
一部の特急から各停(鈍行)まで多くの列車に連結されている普通客車。
こちらは今でも、B.T.C.1000型という4人掛けボックスシート車両が主体で、(一部は6-4人掛けボックスシート)基本設計は日本国鉄の10系軽量客車がベースとなっています。
製造年も1966年から1981年の長期間にかけて300両以上が製造され、今もタイ全土で(一部の)特急から急行・快速・各停に至るまで大活躍しています。
基本設計が日本国鉄の10系客車ベースの車両が、最多勢力を誇るため、どことなく日本の旧型客車の雰囲気が漂います。ドアの窓・トイレ窓も似ています。車内もボックスシート。
なおタイでは全車両が、起毛モケットではなく、ビニールレザー張りです。
快速以上の列車は基本的に座席指定予約が出来ます。(日本と異なり)空いている席は自由席のように運用されているので、予約指定された座席に先客が座っている場合がありますが、ジェスチャーで「そこは私の席」と指定乗車券を見せると、先客は退いてくれます。(日本以外の国ではこのような運用が一般的です)
(↑のんびりお昼寝気持ちよさそう・・・)
席番表示。タイ語分からないとどちらが窓側?
リフレッシュ工事車
さらに、日本国鉄の呼び名では「特別保全工事」(延命改善工事)を施工した車両も登場しています。車内のシートが青色になり、さらに日本国鉄の雰囲気に近い・・・。車内化粧板の交換や車内照明もLED化され、非常に明るくなりました!
客車の出入り台の上にある電球式の等級表示灯、これも、日本国から最初に客車が輸出された時からの伝統のように思います。日本のブルートレインでもこの表示灯はありましたよね。タイ流なら省略しそうな気がします。
長距離の夜行列車に連結されることは少ないですが、1970年代以前の超旧型客車も緑色の旧塗色のまま一部現役です。(味がある、乗りたいなあ~…)
夜行快速
旧型客車や近郊気動車で運行されています。夜行もあり、南本線には非冷房の旧型2等寝台車が連結される列車も残っています。快速で夜行で、寝台車付きといえば、日本では昭和世代の「ながさき号(門司港⇔早岐経由長崎)」とか「はやたま号(紀勢本線)」「山陰号(山陰本線)」を思い出します。2019年の今もこのような列車が走っているなんて、懐かしさを感じます…。
しかし、タイ国鉄も過渡期のようで、私が乗ろうと思った北本線を走る夜行快速の51・52列車は2019年末から、非冷房の旧型2等寝台車の連結がなくなり、冷房付きの2等寝台車のみの連結になりました。(残念!)
旧型2等寝台車の車内
早く乗っておかなければ、もう乗れなくなるかも…と思い、南本線に残る非冷房の旧型夜行寝台車に是非乗りたい…! それで、2019年末に私もタイを往訪して乗車することができました。(↓こちらに乗車記録を掲載しています)
ただ注意点が…。運行上は、特急・急行が優先されるようで、このような長距離運行の快速列車が最も遅延の影響を受けてしまいます。特に南本線の遅延が今も激しいのが実情です。
私が往訪した2019年末の実績では、最大90分の遅延でした!
※なお急行・快速は基本的に全席指定です。乗車券に座席番号が指定されています。しかし諸外国と同じように(日本と異なり)、空いている席は使用して良いというルールなので、自分の指定された席に先客が座っている場合が多々あります。その際は「その席は私の予約」とジェスチャーで示せば、先客は移動してくれます。
【今(2020年)のタイ国鉄は日本国鉄の昭和50年!に近い】
私が思うに2020年のタイ国鉄の夜行用の寝台客車車両の状況は日本国鉄の昭和50年頃に似ているようです。
特急夜行用:
中国製の新型車が2016年に115両も登場。タイ全土の主要路線で運用開始。
日本でいえば、24系(24型や25型)ブルートレインが新製されていた頃に当たりそう。
これで、日本から中古でタイに送られたブルートレイン車両は定期運用を失いました。
急行夜行用:
1980-90年代に日本や韓国で製造され、元々特急用だった冷房付きステンレス車体の寝台車が中心に活躍。日本でいえば、20系ブルートレインが急行に格下げ運用されていた時期に似ています。
快速夜行用:
日本の10系客車に似た非冷房の旧型寝台車もまだ活躍。しかし急行用の格下げもあり、少しずつ引退しています。北本線(チェンマイ方面)も運用が無くなりました。残るは南本線の快速夜行列車に活躍しています。日本でいえば、10系寝台車の引退の時期に似ていると思います。
【列車の遅延状況が確実に分かる
トレイン トラッキングシステム】
タイ国鉄は数年前まで遅延が酷く、皆さんの旅行記録を拝見すると、長距離のダイヤでは、数時間遅延が恒常的。これはタイの皆さんの、のんびりした気質が影響しているとの意見もありますが、動画サイトで現地の鉄道状況を見ると、全路線が非電化、首都バンコク周辺以外は単線、さらに地方に行くと、今もタブレット閉塞・腕木式信号機・・・。列車交換時には、各駅共に同時進入できず、片方の列車は駅構内手前で待たせるしかないでしょうし…。
また渋滞の激しい首都のバンコク周辺でも高架化されていないので踏切が連続、踏切であっても大渋滞の道路交通を急に遮断することができず、列車の方を一時停止させる場合があり、踏切のトラブルが多いようです。
これらの要因で遅延が発生してしまい、さらにその遅延が上下線の全てのダイヤに増大しやすい運行環境にあることは事実なのです。
しかしここ数年、様々な改善策で遅延が少なくなってきているようです。
その一つが、線路の高規格化。コンクリート枕木化がある程度、完了し、2015年にダイヤ改正が行われ、スピードアップされ、また遅延状況を確実に把握できるこの「トレイン トラッキングシステム」が完成し、鉄道関係者だけでなく、利用者も、遅延の状況を事前に確実に把握できるようになりました。
http://tts.railway.co.th/passenger/view.php
このシステムを用い、毎日のようにタイの遅延状況を見ていたら、以下の状況が分かってきました。
優等列車の運行が優先され、長距離運行の快速や各停の遅延が発生しやすい。特に長距離便やマレーシア方面との国際貨物列車が運行されるタイ南部方面の南本線の遅延が発生しやすいです。
昼行用の車両がそのまま夜行(座席車のみで編成)で折返す運用があり(逆もある)、また長距離を運行して、折返し時間がわずかで、前ダイヤの遅延を吸収できずに、始発時点でも遅延する場合があります。
小荷物輸送
タイ国鉄では今も小荷物輸送が盛んで、夜行列車には必ず1両以上の荷物車を連結しています。
旧型の客車の座席シートを取り外し、荷物代用車として使う場合も多いようです。このような荷物車には、行先サボが取り付けられません。乗客は乗らないでね…ということでしょう。
小荷物輸送のため、主要駅には荷物受付窓口と大きな秤(ハカリ)が・・・。現役です。
(昔の日本の駅にもありましたね…) ↓タイ国鉄 南本線 トゥソン分岐駅にて・・・
また、新型の固定編成の寝台列車以外の荷物車は上下線共に機関車側に連結する場合が多いようです。蒸機時代からの名残り?
これらタイ国鉄の荷物車を含む業務用車両、もう一つ、役割があるようです。
それは交代乗務員の休憩スペース。タイ国鉄の夜行列車の運転以外の接客や荷物扱い車掌など客室乗務員の乗務運用(パターン)は、首都バンコクを起点に、夜行で地方都市へ、そのまま折返し、夜行でバンコクに戻る2泊3日の乗務行路が組まれているようで、折返し地点では、車内外で、食事されたり、運動されたり、休憩される乗務員さんたちを多数見かけました。長時間の乗務、お疲れ様でございます!
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